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hEDS・関節過可動の体をどう触って鍼灸施術しているか

  • 6月24日
  • 読了時間: 9分

前置きとして、今回のブログはとっても長くなってしまいました。。 自分自身が患者として様々な施術を受けてきたり、またこの傾向の方に施術してきて感じたことを書いていたら止まらなくなってしまいました。 一応色々、見直して削除したつもりなのですが、とても長いです。 重複しているところもあるかもしれませんが最後まで目を通していただくと、体質について、身体の見方について違った視点が増えるかもしれません。

関節過可動型エーラス・ダンロス症候群(hEDS) や関節が緩く体に不調をきたしやすい疾患があることを前回のブログでお話ししました。

この体の状態では、体のバランスを取るために筋肉が疲れやすいと言われています。

使っているから、疲れているから、硬いからといって強いマッサージを受けることは慎重になった方がいいと考えています。


もみ返しが起きたり、刺激で疲れてしまったり、筋肉の硬さバランスが崩れてしまって症状が悪化してしまったり、一般的には“マッサージを受けて気持ちいい”と感じる刺激でも、hEDSや関節過可動の傾向がある方では、あとから疲労感が強く出たり、痛み方が変わったりすることがあります。


hEDSで起こりやすい身体反応

hEDSや関節過可動のある方の体は、単に「柔らかい」「よく動く」というだけではありません。

関節の可動域が広い一方で、関節そのものの安定性が低くなりやすく、筋肉や神経がその不安定さを補うように働いていることがあります。

そのため、触れてみると一見やわらかそうに見える部分の奥に、強い緊張が残っていたり、反対に力が入りにくい部分と過剰に固めている部分が混在していたりすることがあります。

たとえば、次のような反応です。


防御的な緊張

関節や体幹を守るために、無意識に筋肉を固めている状態です。本人は「力を入れているつもりはない」のに、力が抜けにくくなっていることがあります。


脱力と過緊張の混在

全身が一様に硬いのではなく、「支えきれない場所」と「頑張って支えている場所」が同時に存在しているように感じられることがあります。


皮膚感覚や刺激への敏感さ

軽い刺激でも強く感じたり、逆に自分の体の位置や力の入り方が分かりにくかったりすることがあります。hEDSや関節過可動のある方では、固有感覚やバランスの不安定さが関わることもあるとされています。これは「自分の関節が今どこにあるか」「どのくらい力が入っているか」を感じ取る感覚にも関係します。


微細な疲労

大きな運動をしていなくても、姿勢を保つ・座っている・歩く・首を支えるといった日常動作の中で、細かい負担が積み重なっていることがあります。慢性的な痛みや疲労はhEDSでもよくみられる症状として挙げられています。


呼吸の浅さ

痛みや緊張、不安定さがあると、体を守るために無意識に息を止めたり、浅い呼吸になったりすることがあります。これはhEDSに限った反応ではありませんが、体を支えるための緊張が強い方では、施術中にもよく確認するポイントです。


固有感覚のゆらぎ

関節が大きく動く体では、「どこまで動かしていいのか」「今どの位置にあるのか」が分かりにくくなることがあります。そのため、強く動かす施術や大きく可動域を出す施術よりも、体が安心して位置感覚を取り戻せるような触れ方が大切になると考えています。



こういった体の反応が起こるため、慎重に体に触れて刺激に配慮しながら施術していくことが大切だと考えています。


実際に何を触っているか


関節過可動の体に起こりやすい支えにくさ、防御的な緊張、疲労、呼吸の浅さを示した説明イラスト

hEDSや関節過可動の傾向がある方の施術では、痛みのある場所だけを見て判断するのではなく、体全体がどのように支え合っているかを確認しながら触れていきます。

特に意識しているのは、次のような反応です。


  • 皮膚の張り、薄さ、刺激への反応

  • 呼吸の深さ、息を止めやすいところ

  • 筋肉が自然に緩められるか、または抜けすぎていないか

  • 痛みのある関節周囲の緊張

  • その関節をかばうことで生じている首・背中・腰・骨盤・足などの緊張

  • 熱感、冷え、張りの左右差

  • 腹部や胸部に現れる緊張、硬さ、呼吸との関係

  • 自律神経症状や胃腸症状と関係していそうな反応点


関節や筋肉の痛みだけでなく、疲労感、胃腸症状、動悸のような不快感、息苦しさ、睡眠の乱れ、月経に伴う不調などを一緒に抱えている方もいます。


痛みのある関節だけを見るのではなく、内臓そのものを直接見るというよりも、体がどのような負担を受けているのかを、全身の反応として確認していきます。


ここで大切にしているのは、硬さをすぐに“良くない状態”として扱わないことです。

その緊張が何を支えているのか、どこが代わりに頑張っているのかを、ほかの所見と合わせて見ていきます。


そのため、硬い場所をすぐに強く緩めるのではなく、その緊張が何を守ろうとしているのか、どこが支えきれず、どこが代わりに頑張っているのかを確認していきます。


経絡治療の脈診では、体の緊張の強さ、疲労の出方、刺激に対する余力などを確認する手がかりにもなっています。

また、自律神経系の影響が大きく出ていないか、施術の刺激が強すぎないか、体に変化が起こりそうか、といったことも脈の変化を通して見ています。


腹診や皮膚・筋肉・関節周囲の触診と合わせて、その日の体の状態を見ながら、刺激量や施術の範囲を調整していきます。


痛む場所がどれくらいあるのか。

どこからどこまで施術するのか。

鍼を使うのか、お灸の方がよいのか。

今日はどこまで手を加えて、どこは触りすぎない方がよいのか。


複数の症状がある場合には、すべてを一度に変えようとするのではなく、優先順位を触りながら決めていきます。


皮膚の繊細さにも個人差があります。

以前は平気だった刺激がつらく感じるようになったり、

「前より刺激に弱くなった気がする」とお話しされる方もいます。


お灸を使う場合も、皮膚の反応を慎重に確認しながら行います。

強い熱さを我慢していただくのではなく、「温かく感じる」くらいの刺激で、皮膚の張りや緊張の変化を見ていきます。



なぜ“施術を強くやらない”のか

強く押したり、しっかり揉んだりすれば、筋肉が緩んで楽になりそうに感じることがあります。

しかし、hEDSや関節過可動の傾向がある方の場合、その硬さは単なる凝りではなく、関節や姿勢を守るために体が作っている支えであることがあります。


その支えを一気に外してしまうと、一時的には軽く感じたり、気持ちよく感じたりしても、あとから体が不安定になることがあります。

別の場所で支え直そうとして緊張が強まったり、施術後の疲労感が強く出たりすることもあります。

また、刺激に対して繊細な反応が出やすい方では、強い刺激そのものが負担になることもあります。

そのため、Iluminarでは「硬いから強く緩める」のではなく、その硬さが必要な緊張なのか、もう手放してもよい緊張なのかを見ながら施術していきます。


体が安心して力を抜ける範囲を探すこと。

緩めても、支えを失いすぎないこと。

施術後にぐったりしすぎないこと。


このあたりを大切にしています。

疲労が強い時には、通常と同じように施術するだけでも、だるさが出たり、翌日に疲労が強く残ったりすることがあります。これは好転反応というよりも、オーバードーゼです。


そのような場合には、刺激の少ない施術を選びながら、今出ている症状に対応していきます。施術翌日は辛かったことを正直にフィードバックしていただきたいです。


施術で目指していること


hEDSや関節過可動の施術で見ている皮膚の張り、呼吸、脈、腹部の緊張、熱感や冷え、刺激への反応を示したイラスト


施術で目指しているのは、単に体を柔らかくすることではありません。

hEDSや関節過可動の傾向がある方にとって大切なのは、

「緩むこと」と「支えられること」の両方が成り立つ状態だと考えています。


体がリラックスしても崩れない。

力を抜いても不安定になりすぎない。

必要なところでは支えられて、余分に固めているところは少しずつ手放せる。


そのような状態に近づけるために、施術では次のような変化を目指しています。


  • 呼吸がしやすくなる

  • 首や肩、背中の防御的な緊張が抜けやすくなる

  • 力を入れている場所、抜けている場所に気づきやすくなる

  • 痛みのある場所だけでなく、体全体の支え方が変わる

  • 施術後にぐったりしすぎない刺激量で整える

  • 日常生活の中で、自分の体の反応を把握しやすくなる


また、hEDSや関節過可動の傾向がある方では、痛みだけでなく、疲労感、睡眠の乱れ、胃腸の不調、月経に伴う不調などが重なっていることもあります。

こうした不調を一つひとつ切り離して見るのではなく、体全体の負担が少しでも減ることを目指します。


ただし、目標は「症状をゼロにすること」だけではありません。

症状が出やすい体の特徴を理解しながら、日常生活の中で少しでも付き合いやすい状態を作っていくこと。

体を無理に変えるのではなく、その日の状態に合わせて、少しずつ「扱いやすい体」に近づけていくこと。

そのための一つの選択肢として、鍼灸や手技を使っていきたいと考えています。



柔らかい体質と一生付き合っていく、ということ

この体質を持っている方は症状を「治したい」と体質改善に励んでいる方もいらっしゃるかもしれません。


しかし、結合組織の緩さやそれに伴った影響を考えると

hEDSや関節過可動の傾向がある体は、“一度整えたら終わり”というより、その日の状態に合わせて負担を減らしていく視点が必要になることがあります。


そのうちの一つとして鍼灸や手技が選択肢にあればいいなと思っています。

日替わりのように起こる症状に対して「自分専用の取り扱い説明書」を作っていくことが、体質と付き合っていく上で大切なワークかなと考えています。



こうした体質の傾向や、

  • 原因がわからない疲労感

  • 慢性的な痛み

  • 自律神経症状

  • 胃腸症状

  • 「なんとなくずっと調子が悪い」


このような症状が一つに絞れない方、説明しにくい不調が重なっている方も、まずは今の状態を整理するところからご相談ください。



参考ページ

固有感覚や不安定さについて

The Ehlers-Danlos Society:Physical therapy for hypermobility

The Ehlers-Danlos Society:What is HSD?


hEDS・POTS・MCASについて 私の経験についても触れています


自律神経症状や胃腸症状について、当院でどのように体を見ているのかはこちらにまとめています。


慢性的な緊張や、体が休めなくなっている状態についてはこちら。

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