top of page

抗がん剤のあとの手足のしびれ・痛み(CIPN)に鍼灸でできること

  • 12 時間前
  • 読了時間: 7分

この記事の内容


抗がん剤治療を受けたあとに、「指先や足先がしびれる」「手足がジンジン、ピリピリする」「冷たいものに触れると痛い」「足の裏の感覚が分かりにくい」「ボタンが留めにくい」「物を落としやすくなった」「歩くときに足元が不安定に感じる」といった症状が現れることがあります。


このような症状は、化学療法誘発性末梢神経障害(Chemotherapy-Induced Peripheral Neuropathy:CIPN)と呼ばれています。

抗がん剤治療後の手足の症状には、しびれや感覚の低下が起こる「化学療法誘発性末梢神経障害」と、手のひらや足の裏に赤み・腫れ・皮むけなどが起こる「手足症候群」があります。


この記事では、主に抗がん剤治療後のしびれや痛み、感覚の変化について解説します。


この手足のしびれや痛みなどは、抗がん剤治療が終わったあとも症状が残ることがあり、命に直接関わる症状として扱われにくいため、つらさが周囲に伝わりにくいこともあります。


しかし、手足の感覚は、歩く、物をつかむ、文字を書く、着替える、料理をするといった日常のさまざまな動作に関わっています。

しびれや痛みが続くことは、「感覚がおかしい」ということに加え、仕事や家事、外出など、その人の生活そのものに影響する問題です。



抗がん剤の副作用、手足のしびれ・痛み(CIPN)とは


CIPNは、抗がん剤によって末梢神経が影響を受けることで起こる神経障害です。

特に、タキサン系抗がん剤のパクリタキセルやドセタキセル、白金製剤のオキサリプラチンやシスプラチン、ビンカアルカロイド系薬剤のビンクリスチンなどで起こることが知られています。


症状は手足の先から左右対称に現れることが多く、次のような感覚がみられます。

・ジンジン、ピリピリするしびれ

・焼けるような痛み

・冷たい、熱いなどの感覚の変化

・手先の細かな動作がしにくい

・足の裏の感覚が弱く、つまずきやすい

・靴を履いていても違和感がある

・階段の昇り降りが不安


症状の出方や強さは、使用した薬剤、投与量、治療期間、もともとの体の状態などによって異なります。



薬を飲んでも、症状が残ることがあります


この抗がん剤による手足のしびれや痛みに対しては、痛みを抑える薬やビタミン剤などが使われることがあります。

ただし、現在の医療でも、すべての人にはっきりとした効果が得られる治療が確立しているわけではありません。


2023年の国内ガイドラインでは、鍼灸については、現段階では推奨を決めるための根拠が十分ではないという位置づけです。これは「鍼灸には効果がない」という意味ではなく、研究の数や質がまだ十分にそろっていないことを示しています。

 

一方で、CIPNに対する鍼治療の臨床研究では、しびれ、痛み、生活の質などに変化がみられたという報告も増えています。鍼治療を受けた群と、薬やビタミン剤などの非鍼治療群を比較した研究でも、鍼治療群で症状が軽減したことが報告されています。


そのため鍼灸は、抗がん剤治療に代わるものではなく、がん治療を続けながら、しびれや痛み、生活上の困りごとを軽くするための支持療法の一つとして検討されています。



手足のしびれと痛みに対して、施術で注意して見るところ


抗がん剤治療の影響によるしびれや痛みに対して施術を行うときに観察しているポイントがあります。

まず確認したいのは、

・どこからどこまでしびれているか

・痛みとしびれのどちらが強いか

・触れた感覚が鈍いのか、過敏なのか

・冷たさや熱さに敏感になっていないか

・足裏の感覚や歩行に変化があるか

・手指の細かな動作がしにくくなっていないか

・皮膚や皮下組織に硬さや熱感がないか

といった、症状の範囲と性質です。


同じ「しびれ」でも、感覚が鈍くなっている方、触れるだけで痛い方、火照りを伴う方、冷たく感じる方では、体への触れ方や刺激量を変える必要があります。

特にCIPNでは、明らかな炎症がなくても火照り感を感じる場合があり、刺激によって一時的に症状が強くなることもあるため、熱感や皮膚の反応を確認しながら施術することが大切です。



Iluminarで行うCIPNへの鍼灸施術


Iluminar鍼灸マッサージ治療院では、手足のしびれだけを見るのではなく、現在のがん治療の状況、使用した薬剤、症状が始まった時期、体力や疲労の程度などを伺ったうえで施術を組み立てます。


初めに脈の状態を確認します。抗がん剤治療中・治療後には、体力の消耗やだるさが脈に現れることがあり、その場合は体力を補うことを目的とした本治法を行います。また、消耗によって熱が強くなっている場合や、体内に熱がこもっていると考えられる場合には、熱の状態に合わせた経穴を使います。本治法の内容は、その時の脈の状態によって変わります。


抗がん剤治療後の体には、しびれだけでなく、疲れやすさ、食欲低下、睡眠の変化、冷えや火照りなどが重なっていることがあります。


そのあとに手足のしびれや痛みが残っている場所に施術していきます。 ただ、手足の感覚が低下している場合には、強い刺激を加えればよいわけではありません。

皮膚の張り、熱感、冷え、皮下組織の硬さ、触れたときの反応を確認し、症状や体力に合わせて刺激量を調整します。


刺す鍼だけでなく、皮膚に刺入しない鍉鍼(ていしん)も使用します。

鍉鍼は、金属製の鍼を皮膚に当てたり、皮膚や筋肉の表面を丁寧に動かしたりする施術です。CIPNでは、手指や足趾、前腕、下腿などに使用し、硬くなっている部分や感覚の変化がある範囲を確認しながら行います。



私自身、抗がん剤治療後に手足のしびれが残った父に施術をしていました。 実際に触れてみると、本人がしびれや痛みを感じていたところには独特の硬さを感じるようなことがありました。 その経験からも、どこに、どのような感覚の変化や硬さがあるのかを、実際に触れて確認することが大切だと考えています。



症状の変化を細かく確認します


手足のしびれや痛みの症状は、「ある・ない」だけでは評価しにくいものです。

施術では、

・痛みが先に軽くなった

・しびれの質が変わった

・触れたときの不快感が減った

・しびれている範囲が狭くなった

・手足の先へ症状の範囲が移動した

・ボタンや箸などが使いやすくなった

・歩くときの足裏の感覚が少し分かりやすくなった


など、小さな変化も確認します。

この抗がん剤治療後の手足のしびれや痛みに対する鍼灸治療については、一定期間継続して施術を行い、痛みやしびれ、日常生活への影響などを評価する研究も行われています。

 

一度の施術ですべてのしびれがなくなることはほぼありません。症状が長く続いている場合や、神経への影響が強い場合には、経過を見ながら施術を重ねる必要があります。

Iluminarでも、その日の感覚もふくめて症状の範囲や日常動作がどのように変化しているかを一緒に確認していきます。



がん治療中・治療後の鍼灸で大切なこと


がん治療中の鍼灸では、何よりも、現在受けている治療を妨げないことが大切です。

抗がん剤治療中は、白血球や血小板が低下することがあります。感染や出血の危険が高い時期には、刺す鍼を控える必要があります。

また、

・リンパ節郭清後の同側の手足

・リンパ浮腫がある部位

・放射線治療中、または照射予定の部位

・腫瘍、潰瘍、感染、強い皮膚障害がある部位

・感覚が著しく低下している部位への温熱刺激

などには、特に注意が必要です。


がん治療中の鍼灸では、好中球や血小板の値、リンパ浮腫の有無、放射線照射部位、感覚低下の程度などを確認し、安全性を優先して施術方法を判断する必要があります。

 

そのため、ご来院時には、現在の治療内容、血液検査の結果、手術やリンパ節郭清の有無などを確認させていただくことがあります。

主治医から鍼灸を止められている場合や、発熱、感染、急な腫れなどがある場合は、施術よりも医療機関での確認を優先します。



抗がん剤治療後のしびれを、我慢し続けないために


抗がん剤治療を終えたあとも、しびれや痛みだけが長く残ることがあります。

「治療は終わったのだから仕方がない」「命に関わる症状ではないから我慢するしかない」「病院ではこれ以上できることがないと言われた」

そう感じていても、手足の症状が生活に与える負担は小さくありません。しかし、鍼灸ですべてのしびれや痛みをなくせると約束することはできません。

それでも、症状に応じて施術を行うことで、しびれや痛み、日常動作の負担が軽くなる可能性があります。

Iluminar鍼灸マッサージ治療院では、抗がん剤治療による手足のしびれ・痛みについてもご相談を受けています。

現在治療中の方も、治療終了後も症状が残っている方も、まずは今の症状と治療状況をお聞かせください。






 
 
 

コメント


bottom of page